救急搬送

 

右上の一番奥の歯の痛みが気になり、

数日前にかかりつけ歯科に行きました。

 

噛み合わせや食いしばりの力が強いため

特に右上奥歯への負荷が大きくかかっているそうで、

これまでもセラミックの詰め物が欠けたり、

たまに痛みを感じることもあったので、

その都度注意を促されていました。

 

珍しく痛み止めを飲まねば辛いくらいの痛みが数日続き、

その後は痛みも治まっていたのですが、

どうもすっきりしないことから定期検診を待たずに

急患で診てもらうことにしたのです。

 

院長先生に診てもらう前に、

歯科衛生士さんが口内の写真を撮って

目の前のスクリーンに画像を映して準備をしてくれます。

その写真を見て衝撃を受けました。

大きな痛々しいひびが入って真っ二つに割れている・・!

まさに臼が半分に割れているようなかんじです。

まさかこんなに酷い状態だったとは!

 

きっと先生も、こうなるのを防ぎたかった・・と、

残念に思われたでしょう。

「50歳前後でこうして歯が割れる方もおられます」と

フォローしてくれましたが、治療としては抜歯しかないということ。

痛みのある内側半分を抜歯し、残りの半分を温存する方向で、

治療をすることになりました。

 

レントゲンを撮り、抜歯の準備が整い次第、

局部麻酔をして抜歯処置が始まったのですが、

なかなか麻酔が効かず少し処置に時間がかかっています。

何度か麻酔を追加してようやく抜歯できる状態になると、

抜歯に用いる機具の全圧力が唇に押しつけられ、

こちらの方の痛みがつらい。

再度ポジションを変更して無事に抜歯が終わりました。

 

「少し休憩しましょうか」

ここまでは良かったのです。

すると急に歯科衛生士さんが集まり、

院長先生があれこれ指示を出したり私に声かけをします。

足の下にクッションを当てられ、

指にはパルスオキシメーター、

ゆっくり呼吸呼吸してくださいねー、大丈夫ですよーと、

優しく穏やかな声が聞こえてきます。

 

歯科治療中に、痛みがあるのに我慢して治療を進めると、

交換神経が興奮状態になって、血圧が上がります。

その状態が長く続くと突然、副交感神経(迷走神経)が優位になり、

脈拍と血圧の低下が起こるそうで(=血管迷走神経反射)、

しばらく休めば戻りますので大丈夫ですよ、と

穏やかな院長先生の説明の声もちゃんと聞こえていました。

 

私は大丈夫なのに、どうしたのかな?と思っていると、

パルスオキシメーターを着けている指がピクピクと動き、

左太ももの筋肉もピクピク痙攣し始めました。

目を閉じているのに、チカチカと光りも見えはじめ、

今度は顔の向きを変えるように頭が左右に動きます。

この震えがだんだん大きくなっていきました。

 

少し待っても元に戻るどころか、状態は進行しています。

血圧計、酸素マスク、と次々に指示が飛び、

酸素や血圧の数値を確認しながら、救急へ連絡。

緊急連絡先を聞かれたので、

唯一覚えている実家の電話番号を伝え、

救急車の到着を待ちました。

 

救急のストレッチャーが治療場所まで入れなかったので、

薄いマットのようなものに乗せられて、外に連れ出されたようです。

院長先生も救急車に同乗し、救急隊の方に状況を説明してくれました。

搬送先に連絡する隊員の方が、

「到着したときは顔面蒼白でしたが今は赤みが戻っています」

「熱が38.6あります」と説明していたことも覚えています。

最初から最後まで意識はありました。

ただ、体の震えが止まらず、なぞの高熱があるということ。

 

搬送先も決まり、近くの県立病院に運ばれるも、

コロナ感染の疑いで救急車内でPCR検査。

地下の救急室に運ばれ、防護服を着用した方々が、

私の周りでてきばきと必要な検査をしてくれました。

 

果たしてコロナは陰性。(インフルエンザその他の感染症も陰性判明)。

血液検査の結果も、数値は健康そのものだということでした。

唯一関連が分からないのが、発熱です。

何度か計測し直しましたが、37度台からは下がりません。

でも、その頃には私の意識もよりしっかりしてきて、

ゆっくり歩いてトイレに行くこともできました。

 

なぜ発熱が続いているのかの理由が解明できないため、

臓器に炎症が起こっていないか検査をする必要があるかなど総合的に検討し、

特段問題なしということで救急室を出ることができました。

 

しかし、歯医者からまさかの救急搬送とは!

健康が取り柄で、病気をしないからかかりつけ医も見つけられない私。

出産もしていないので病院のベッドや入院には一切縁がなく、

皮膚科と歯科以外は医療と関わりがありませんでした。

 

それが一体なぜこんなことに?という疑問は残りますが、

それよりも歯科医院、救急隊員、救急室の皆さんと多くの人に迷惑をかけ、

恥ずかしく申し訳ない気持ちが勝ります。

皆さんお忙しいにも関わらずプロフェッショナルに的確冷静に、

そして温かくご対応くださったことに、心から感謝です。