昨年は6本鑑賞したシネマ歌舞伎。
今年になって急に歌舞伎熱が冷めたわけではなく、
上演のタイミングが合わずやっと2本目となりました。
1本目は4月に上映された『野田版 桜の森の満開の下』
坂口安吾の小説をもとに野田秀樹が書き起こした舞台「贋作・桜の森の満開の下」、
その舞台を新たに歌舞伎として野田秀樹に演出された新作歌舞伎です。
中村勘九郎・七之助兄弟と市川染五郎(当時)など若手人気俳優の競演は、
幕開け早々に舞台劇さながら若々しい躍動感と笑いに溢れ、
かと思えば圧倒的で幻想的な歌舞伎の美が凝縮されたクライマックス。
故・中村勘三郎さんが野田秀樹と組んで試みてきた新作歌舞伎「野田版歌舞伎」への
強い想いが、この作品に携わる全ての人に宿っていることが感じられ、
本当に感動しました。
またすぐにでも次の歌舞伎作品を観たいと思っていたものの
GW明けの最も仕事が忙しい時に上映されたため、
あいにく時間的にも気持ち的にも鑑賞する余裕がありませんでした。
こちらは人形浄瑠璃をそのまま歌舞伎に取り込む趣向で、
人形遣いを尾上菊之助、人形の清姫を坂東玉三郎さんが演じています。
玉三郎さんの所作一つ一つがまさに操り人形でさすがの一言。
ただの人形でも人間でもなく心が宿った浄瑠璃人形という複雑な役柄を
見事な芸でみせてくれました。
続いて『鷺娘』
坂東玉三郎さんの『鷺娘』一度観てみたいと楽しみにしていました。
冬景色の舞に白無垢の振り袖に黒い帯の格好をした鷺の精。
傘を使って踊る姿は時折鳥であるかのように見えます。
舞台や曲調が変わる度に、衣装も踊りも変わり、
静けさと華やかさの変化に富む流れの中で哀切極まる幻想的な終焉。
作品に対する深い理解と芸の技術、完璧な優雅さで歌舞伎の美を魅せる
坂東玉三郎さんにただただ深い敬意を表します。
7月の歌舞伎も楽しみです。