京都南座 當る丑歳 吉例顔見世興行

 

 

久しぶりに歌舞伎の本興行を観ることができました。

京都南座の12月の風物詩「吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」です。

 

今年の吉例顔見世興行は、新型コロナウイルス感染症対策のため、

各公演は三部制となり、それぞれ2演目の狂言立て、

公演期間も例年の約半分となることが決まりました。

こんな状況にあっても伝統を守り、こんな状況だからこそ娯楽を提供したい、という

歌舞伎会の心意気が感じられ、せっかくのこの機会に私も足を運ぶことにしました。

 

三部制の中でも、第二部の『熊谷陣屋』には、片岡仁左衛門さんが出演されるとあって、

迷わず第二部のしかも初日12月5日(土)のチケットを購入し、楽しみにしていました。

ところが公演の1週間前、その片岡仁左衛門さんがコロナの濃厚接触者と認定されたため、

12月5日(土)・6日(日)の2日間休演するとの発表がありました。

本公演に出演予定の仁左衛門さんの息子片岡孝太郎さんがコロナに罹患のためということ。

初日と2日目は代役にて上演するので悪しからずご了承ください、との情報を

ホームページで見つけた時にはあまりに落胆し、払い戻しや変更が可能かどうかを調べるも、

悪しからずご了承せねばならず、本当にショックでした。

 

結果的には、仁左衛門さんは経過観察期間を経て、

12月7日(月)から復帰されるということが初日当日に正式に発表され、

残りの興行ではお役を務められると安堵と喜びを感じるべきところ、

よりにもよって、自分が観に行く日は代役ということで何ともすっきりしないまま、

当日を迎えました。

 

仁左衛門さん、孝太郎さんの休演により配役も大きく異なったため、

当日の朝まで行くか行かまいか迷っていたのですが、

代役を立てても上演をされるということへの敬意と、

チケットをすでに購入しているからという勿体無い精神とで、

コロナを気にしながらも京都まで出かけることに決めました。

 

阪急夙川から阪急河原町駅まで約1時間、車内でも感染が気になりますし、

河原町駅を出て通りに出た時の人の多さで、ますます感染への不安が増します。

こんな気持ちでわざわざ出かけてきた自分が不甲斐ない…。

南座の前は、まねき看板の写真を撮ろうとする人、入場しようとする人、

通りを通行する人でいっぱいです。

入場するときは間隔を取ると書いてあったのに狭すぎて間隔なし。

チケットの半券は自分で切り取って回収のカゴに入れ、

入場のときに体温チェックと手指消毒とのことでしたが、

サーモグラフィーが小さすぎて気づかず素通りする人の方が多いような・・・。

客席は最前列と花道の一番近い席は空席に、前後左右は空けた配席でしたが、

近くに座っていた高齢者の方々は、顔を近づけて大声で話し合っているので、

それも気になる…。

マスク着用を事務づけられているわりに、鼻と口を覆わずマスクは顎にかかってるし…。

と、そんなこんなでコロナのことばかりが気がかりになる始末です。

 

それでも上演が始まったら、歌舞伎独特の格式や華やかさ、人情溢れる物語に、

あっという間に引き込まれ、公演中は何度も惜しみなく拍手を送りました。

特に今回の急な配役変更については、短期間に別のお役のセリフや所作をマスターし、

心情を込めて演じられた歌舞伎役者の方々に大きな敬意を払いたいと思います。

この日は、急遽、既報の配役変更以外に、片岡秀太郎さんも体調不良で休演されたようで、

さらなる代役が当てられたそうです。

仁左衛門さんをはじめ、松嶋屋でも格上となる秀太郎さん、孝太郎さんの穴を埋めるのは、

相当のプレッシャーだったろうと拝察します。

予定とおりの配役で観ることができなかったことは本当に残念でしたが、

歌舞伎という娯楽の素晴らしさに改めて感服しましたし、

コロナ禍における娯楽のあり方についても考えさせられた一日でした。

 

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