シネマ歌舞伎『法界坊』

 

先週、大阪松竹座へ歌舞伎を観に行ったばかりですが、

昨日は月イチシネマ歌舞伎を観るために映画館へ。

10月のシネマ歌舞伎が今週1週間限定上映だったため、

土曜の半日勤務が終わったあとに三宮まで急ぐことにしました。

 

9月のシネマ歌舞伎はあいにく観そびれてしまい、

3枚綴り前売り券を1月までに使い切るために

ほんの少し義務感を感じながら150分の長い上映に挑みましたが、

先週の生の歌舞伎をしのぐ感動でした。

 

2008年11月に浅草寺境内に特設された「平成中村座」で

上演された『法界坊』。

こちらの公演は串田和美演出版で

登場人物の訳名や関係性が原作とは異なるそうですが、

ドタバタ喜劇でやりたい放題の主人公は中村勘三郎さんにはまり役で、

共演の役者との掛け合いに笑いが止まりません。

全ての登場人物のキャラクターが生き生きとしていて、

芝居小屋全体が一体化していた様子がスクリーンから伝わってきます。

 

そして15分の休憩を挟んでの大詰めは所作事の「双面」(ふたおもて)。

法界坊と野分姫の亡霊を一人で演じ分ける常磐津舞踊「双面水照月」では、

これまでのコミカルなドタバタ喜劇から一転、

歌舞伎の要素が存分に詰まった舞踊劇です。

 

伝統芸能を体現する歌舞伎役者の精神をたっぷりと魅せ、

クライマックスへ昇華する様に圧倒されっぱなし。

さらに最後にステージの後ろの壁が取り外され、

芝居小屋が建てられている浅草寺境内の木々が背景に現れたとき、

あまりの感動に涙が流れました。

 

単に芝居や歌舞伎をみせるだけではなく、

観客や会場までをも巻き込むほどに力を尽くし進化した作品。

まさに中村勘三郎さんの人柄と生き方そのものが現れた舞台でした。

稀有の存在に改めて哀悼を表します。