夏休み最終日

 

16日(水)

再び歌舞伎を観に行きました。

 

と言っても、今回は実際の公演ではなく「シネマ歌舞伎」です。

カメラで撮影した歌舞伎の舞台公演を映画館のスクリーンで

デジタル上映して楽しむというもので、

たまたま8月12日~18日の一週間に上映があるのを見つけ、

これは夏休み最後を締めるにふさわしいと出かけることにしました。

 

作品は『喜撰/棒しばり』。

『棒しばり』は2004年4月、『喜撰』は2013年6月に、

いずれも歌舞伎座で公演された演目で、

どちらも坂東三津五郎さんの芸が光る作品だそうです。

 

まずは『棒しばり』から。

狂言の演目のひとつをベースに歌舞伎化したもののようですが、

太郎冠者・次郎冠者を坂東三津五郎中村勘三郎が演じ、

ふたりの掛け合いがとても面白く笑ってばかり。

またふたりの軽やかで華のある舞踊にもすっかり引き込まれ、

初心者でも十分に楽しむことができました。

 

引き続いて『喜撰』。

六歌仙を扱った『六歌仙容彩』のうちのひとつで、

喜撰法師が女性を口説く踊りということで

舞踊の名手、七代目坂東三津五郎の当たり役、家の芸だそうです。

 

歌舞伎も舞踊も知識のない私には、

花道から桜の枝を持って登場したお坊さんの外見がかなり強烈で、

正直に言うとよく分からず引き込まれるまでには時間がかかりました。

でも、終盤、若いお坊さんたちも踊りを披露する場面をみたら、

分からないなりにも次元の違う熟練の才能は明らかで、

若い人には出せない円熟した芸というものがあるのだなと、

感じることができました。

 

 

帰りのエレベーターで両親世代のご夫婦が話しているのが聞こえました。

「本当に残念だわねぇ」

「ふたりともだからね」

「きっと本人が一番残念でしょうね」

 

坂東三津五郎さんと中村勘三郎さんが続くように若くして亡くなったことは、

今もまだ記憶に新しいことです。

こうして出演された作品を観ると、改めて皆がそう思うことでしょう。

 

2本で77分という短い上映が終わってから、

歌舞伎のことも、歌舞伎役者のことももっと知りたいと思った私は、

帰宅して早々に図書館に行き、まずはおふたりに関する本を借りてきました。

 

幸運にも、坂東三津五郎さん著の『歌舞伎の愉しみ』という本を見つけました。

早速読んでみると「踊りの家に生まれて」とする章があり、

『喜撰』についても語っておられました。

 

観る側にも踊る側にも、何度も観ているうちに、踊っていくうちに、

わかってくるところも、あるのではないかと思えるような作品だそうです。

 

さらに「今の年齢ではまだやれない踊りがある」という踊りへの姿勢。

人生をかけて学び続け精進して円熟していく歌舞伎役者の凄みを感じるとともに、

芸の道に生きる人たちの計り知れない覚悟や志には全く頭が下がります。

 

 

 

 

というわけで、急に歌舞伎に興味を持ち始め今年の夏休み。

明日からはすっかり忘却の彼方だった仕事に戻ります。

きっと職場の人たちには「(夏休みは)何もしてない」と報告して終わります。

でも、こうして何かしら家族と一緒に時間を過ごしたおかげで、

気分もすっかり休まりました。有り難いことです。

 

何気ない夏休みの備忘録おわり。