GIRL WITH A PEARL EARRING

 

カナダから持ち帰った本です。  

 

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引越しの際、後ろ指を引かれる思いで 

25kgまでに厳選した本を第1便で日本に発送したのち、 

残りの私物は大胆にほとんどを処分して9箱にまとめて順次発送、 

いよいよ帰国直前になって古本屋で購入したこの本を 

スーツケースに入れて帰ってきました。 

 

表紙と題名からわかるように、 

17世紀の画家フェルメールの有名な絵画 

真珠の耳飾りの少女」を題材にした小説です。 

 

確か10年ほど前に、スカーレット・ヨハンソンが 

青いターバンを巻いた少女を演じた映画の原作ですが、 

当時の映画のポスターは鮮やかに印象に残っているものの映画は未見。 

ストーリーも前評判も知らずに手に取りました。 

 

これが予想を超える素晴らしさ! 

久しぶりに作品の世界にぐいぐいと引き込まれました。 

 

当時の生計画家とパトロンとの関係、 

絵の具などない時代の色の調合の仕方、

対立宗教とのかかわりなど美術史が興味深く描かれる一方で、 

奉公に出なければならない貧しい市民の生活や 

それとは真逆にある高階級の暮らし、

全てが相対する薄暗さの中でこそ主人公の少女が持つ

鮮やかな色彩感覚が光となって浮かび上がり、

まるで映画を観ているように情景が目の前に広がります。 

 

純粋であるはずの画家と少女の関係に官能を持たせ、 

あたかもこの物語が、フェルメールが描いた絵画にまつわる 

隠された実話であるかのように感じさせる手腕は、

文句のつけようがありません。 

なによりも、一文一文が簡潔で英語が読みやすい。 

 

ひさしぶりの読後の余韻。

お気に入りの仲間入りです。